世にも不思議な損保の世界

現役損保社員として20数年、業界に対して思うこと、保険やお金に関する話を面白おかしくつづります。

チケット紛失事件

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この仕事をしていると大規模代理店に対しての立場が本当に弱くなります。

大規模代理店は損保との取引が自由にできるからです。

大口契約を更新のタイミングで他損保に持っていかれたらえらいことです。

 

そんな関係なので損保社員は大規模代理店様にはひたすら低姿勢を通します。

今回はそんな関係から出てきた事件でした。

 

当時私の後輩がプロ野球の球場の経営に関わる代理店の担当をしていました。

その代理店はプロ野球のチケットを販売していました。

我々損保会社は会社としてそのチケットを一括購入していました。

 

後輩は会社として購入したチケットを社内で転売する役割を持っていました。

毎年コツコツと1枚ずつさばいていました。

ところがある年、大事件が起こりました。

 

何と一括購入した600万円分のチケットが丸々紛失してしまったのです。

その日から社内の大捜索がはじまりました。

各自の机、フロア、社有車、それこそメンバー総出で探しました。

 

やはり出てきません。

ここで一つ疑念が出てきました。

その後輩が社内の注文をさばき切れず、処分したのではないかと。

 

実際購入者から「試合直前なのにチケットが来ていない」

というクレームが入りはじめていました。

いやいや、そんなことはありませんと回答していました。

 

そんな矢先にこの事件が発生したのです。

当時の課長は「今だったら正直に言ってもいいよ」などと

その後輩にささやいていました。

 

ももしそうだとしても言い出せるはずはないですよね。

結局チケットは出てきませんでした。

それでは結果どうなったのか。

 

あきらめた課長はチケットを発行する代理店側に泣きつきました。

すると何と再発行してくれるとのことではないですか。

課のメンバーも皆、ほっとしました。

下手すると取引停止の可能性もあった話でしたので。

 

結局本当に紛失したのか、その後輩が処分したのか。

今となっては事実は分かりません。

ただその後輩が多忙を極めていて、

チケットの予約手配に手が回っていなかったのは事実です。

 

損保社員ってこんなことも当たり前のようにしないといけないんです。

皆さん、どう思われますか?

怪しげな代理店の存在

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今回の話は私ではなく、当時の後輩の話です。

その後輩はとにかくたくさんの代理店を担当していました。

私もたくさん担当していましたが、その後輩もかなり多かったです。

 

ベテランの担当者はあまり担当を持たず、

課の運営や重要顧客を担当するという分担となっていました。

だからと言って仕事量が多いかというとそうではないのですが(笑)

 

その後輩の担当する代理店名は建物の名前が多かったのです。

株式会社〇〇〇(〇〇〇は建物の名前)となっていました。

何だか不思議だなと思って当時その後輩に聞きました。

 

「自社建物の火災保険を取るためですよ」との回答でした。

「あれ?それっておかしいんじゃないの?」と聞き返しました。

「そうなんですよね、でも昔からあるので」という回答。

 

通常代理店は外販することが業務なので自社物件の取り扱いには制限があります。

具体的に扱い保険料の50%以上外販でないと代理店解約となってしまいます。

自己の物件や親会社等一定の企業や親族の保険を取り扱うことを目的にできません。

これは保険業法の取り決めです。

保険料の割引目的のために代理店をやってはいけません、という主旨です。

 

いろいろ聞いたり調べたりしてすごいことが分かりました。

代理店の名前かつ建物の名前は第三セクターの建物の名前です。

いわゆる「箱物(ハコモノ)」というやつです。

 

第三セクターとは国や地方公共団体と民間が共同出資して事業を行う方式です。

バブルの時に大流行しました。

結局経営が成り立たず、大赤字を出したものがほとんどです。

 

高層ビルや遊園地などを作ったものの、ほとんど失敗しました。

当時から経営状態が思わしくありません。

せめてもの手数料収入といったところなのでしょう。

自社の火災保険や賠償責任保険、自動車保険などを掛けていました。

 

でも外販なんてできるはずがありません。

すぐにでも自己契約の比率が50%を超えて赤字になってしまいます。

ではなぜそれができていたのか?

 

何と第三セクター同士で契約のバーター(交換)をしていたからです。

一目見ただけではどういうやり取りをしているか分かりません。

第三セクターもたくさんありますから。

 

ところがその後輩のところにはそのやり取りの表がありました。

それを見るとバーターの流れが分かるようになっています。

歴代の担当者の努力と汗の結晶です。

自分の担当の時にその代理店がなくなると成績が悪くなりますから。

 

でも法令ギリギリというか本来アウトな話ですよね。

その後次々と経営破たんしたのでそんな代理店も自然消滅したことでしょう。

皆さん、どう思われますか?

 

 

やっぱり代理店様です

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ディーラー営業を離れれば無茶な仕事はないと思っていました。

しかしそれは幻想に過ぎませんでした。

前回お話ししたマンション管理会社での話です。

 

自社を含めた2社で保険を取り合う形となっていました。

選択権は本来お客様である管理組合のはずです。

ただ管理組合が保険に対して直接的な意見を述べることはまずありません。

 

そうなると決定権は保険を販売する代理店側になります。

つまり我々保険会社に競わせることが可能となります。

我々も営業ですから1件でも契約が欲しい。

 

特に分譲マンションの共用部の保険は1件単価が大きいから必死です。

足しげく通ってその管理会社からの評価が高くなるように行動しました。

 

まずは単純ですが訪問頻度を上げて仲良くなること。

また保険に関する情報提供も頻繁に行います。

何でもお手伝いする姿勢は大切です。

 

マンションを購入した人を集めて住宅ローンの契約を行うイベントがあります。

金銭消費貸借契約会、通称「金消会」というやつです。

引き渡しの1か月前くらいに実施されることが多いです。

 

ここでは住宅ローンの契約だけでなく、

引っ越しやネットなど住宅に関するいろいろな業者が呼ばれて説明を行います。

そこに保険会社である我々も呼ばれていました。

火災保険の販売をするためです。

 

本来であれば販売するのは代理店である管理会社の仕事です。

ただ人数不足ということもあって競合社とともに毎回行っていました。

遠方の物件だと半日つぶれることもざらにありました。

 

ところがそこでは単価の低い1年契約火災保険は当社、

単価の高い長期所得補償保険はもう1社というすみ分けでした。

当社としては割りに合わないものでした。

 

ちなみに長期所得補償保険とは病気やケガで働けなくなったときの保険です。

収入がなくなって住宅ローンが払えなくなるリスクに備える保険です。

これを入居のタイミングでおすすめするわけです。

 

金消会が続くと結構時間が取られるだけに結構大変でした。

しかも単価が低いので営業成績にもつながりません。

ところがまたチャンスが到来しました。

 

相手社が長期所得補償保険の値上げを実施したのです。

こっちは長らく商品の見直しをしていなかったので割安感が出ました。

それ以降長期所得補償保険の担当が回ってきました。

 

成績が上がってラッキーでした。

でも本来これって代理店の業務なんですよね。

皆さん、どう思われますか?

 

 

 

 

 

マンション保険の割引

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当時マンション管理会社を担当していました。

これも名前を聞けば誰もが知っている会社でした。

主な保険種目は分譲マンションの共用部を対象とする火災保険でした。

 

その管理会社では自分の会社を含めて2社の取り扱いがありました。

マンションを建てる度にどちらかの会社で保険を掛けていました。

メインはもう1社の方でしたが、自社商品が選ばれることもありました。

 

マンションの管理組合は基本的に管理会社にお任せです。

管理会社が勧める保険にそのまま入る傾向があります。

つまりその管理会社が保険会社の決定権を持っていました。

 

やはり過去からの取引は変えられません。

保険料もだいたい同じような感じで優位性もありません。

いろいろ工夫しましたが、割り込む余地はありませんでした。

 

ところが千載一遇のチャンスはやってきました。

何と保険料を割り引いてもいいという指示が出たのです。

個人分野の保険は基本的に割引をしてはいけません。

 

というと法人分野は割引をして良いのかという話ですが、

これは全然オッケーです。

この話はまた別の機会に書きたいと思います。

 

何とこの管理会社の取り扱いであれば10%引いていいよと。

大口ユーザー割引みたいなものです。

これで一気に保険料競争力が上がりました。

以降当社の保険が採用されることが多くなりました。

 

マンション共用部分の保険は保険料規模が大きいので大増収です。

いやいやラッキー。

今までの努力は何だったんだ。

 

でもこれって何か変だと思いませんか。

別のところでは10%引かずに売っているわけです。

同じ商品がある代理店では定価で、ある代理店では10%引きです。

 

同じ保険会社が扱っている火災保険で保険料が違うのです。

一般人はそんなこと思いもしませんよね。

個人的にも何か不公平を感じるところです。

 

定価販売で売っている個人代理店可哀そうです。

定価で買わされている一般顧客も釈然としないでしょう。

皆さん、どう思われますか?

 

 

 

 

 

 

 

大変な保険

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この塾では教室向けの傷害保険もやっていました。

経営者、雇われ先生を対象とする団体保険です。

これも年間何千万円かの保険料の保険となっていました。

 

団体保険であったために毎年の募集は大変でした。

当時も保険の募集帳票というのはかなり厳格化されていて、

原則は保険会社汎用のものを使うことになっていました。

 

でも当然その団体オリジナルの内容になっているので、

個別にパンフレットを作成しないといけません。

募集する団体側との内容の打ち合わせ、社内の稟議、

印刷業者との打ち合わせ、印刷会社からの納期、塾側への納品などなど。

 

塾側では各塾に定期的に送付する書類の発送のタイミングがあって、

それに間に合わないと大変なことになります。

それぞれの工程に滞りが出ることは許されません。

 

中でも一番大変なのは社内の稟議です。

塾の方から言われたことを盛り込んだ内容を入れるとダメ出しです。

NGワードがあって「激安」といった刺激的な言葉、

「一番」といった裏付けのない言葉は使用禁止です。

 

またチェックする社内の人はそれだけしかしていない暇な人が多く、

何だかんだイチャモンをつけてきて面倒くさい。

だったらお前がやれよと言いたくなることが多々ありました。

 

一つひとつクリアして外に出す文書が出来上がるのですが、

その後その内容で印刷会社に発注する際に指示をします。

これも骨が折れるのですが結構印刷会社が内容にミスが多い。

やり直しをしているうちに納期が迫ると胃が痛い思いをします。

 

印刷会社とは毎回金額と納期の交渉をします。

社内でも予算管理がうるさいので交渉しますが、印刷会社も引きません。

値段が高いと後から上司に文句言われます。

一方、交渉して納期が遅れることは許されません。

結構面倒な仕事です。

 

でもここまでやって無事納品されても印刷ミスが発生します。

その時はショックです。

再度訂正文書を添付するなどで対応しますが、当然関係者から小言を言われます。

 

一般の方には保険のパンフレットがどれだけ大変な思いで作られたものか

手に取るときに少しでも感じてもらえたらな、と思います。

 

皆さん、どう思われますか?

適当な保険

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全国にフランチャイズ展開する塾の保険の話です。

その保険は通塾する児童がケガをした時に保険金を払うものでした。

よくそんな保険作ったなって感じです。

 

これも保険料計算の根拠があいまいでした。

以前からずっとそのままの内容になっていました。

聞いたこともない特約もついていました。

 

私もどうすることもできませんでした。

お手上げってやつです。

 

会社としても新規契約の対応をしていませんでした。

これまで契約していた塾に対して更新のみ受け付けていました。

私も下手に内容を変えて面倒に巻き込まれたくありませんでした。

 

これって官僚とか役所の人の考え方ですよね。

前例踏襲していれば責任は問われない。

組織が大きくなるとえてしてこうなるんでしょうね。

 

結局前の内容を一切変えることなくそのまま更新対応しました。

募集パンフレットも全く同じ、日付だけ変えました。

果たしてその後どうなったのか私にも良く分かりません。

 

ひょっとしたらそのまま入り続けている塾もあるかも。

まあ何かあったら保険金支払いは大丈夫だと思いますが。

事故もなさそうですが保険料も安かったのでまあいいかとも思います。

 

皆さん、どう思われますか?

危険な保険

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当時保険業界にコンプライアンスという概念が登場しました。

正しくないことは全て見直す、というのが基本です。

業界側からするといきなり規制が厳しくなりました。

というかそれだけいい加減な保険が多かったかということです。

 

そんな時代、先の高校野球の保険は危ないお金の集め方をしていました。 

団体の保険というのはいったん団体が加入者からお金を集めます。

その保険も本来であれば団体の代表がお金を集めるべきでした。

 

ところが何らかの理由でそれができなかったのでしょう。

あるいは団体側から断られたのに保険をスタートしたかったのでしょうか。

あろうことか当時の担当者の個人口座を使って集金をしていたのです。

 

私の担当する直前に始末書が提出されていました。

当時の担当者の上司が書いた始末書(経緯書)でした。

担当者がやめたのをいいことに、担当者が勝手にやったことになっていました。

 

一担当者がそんなことをするはずがありません。

1つの契約を取ることでクビを賭けるなんてしません。

どうやら退職後に責任を押し付けられたようです。

その担当者もそうした会社に耐えられずやめていったのでしょう。

 

保険料も適当、そして危険な集金方法。

何千万もの保険料が一旦保険会社社員の個人口座に入る保険。

着服を疑われても言い訳なんてできません。

 

下手するとその責任が押し付けられる。えらいところに来てしまった。

その時は背筋が凍る思いでした。

幸い自分が来た時には解消されていたので良かったのですが。

 

きっと他にもこんなことがたくさんあるのだろう。

 

私の予感は当たっていました。 

その後続々と危ない契約が出てきました。

私の担当外にも存在していました。 

 

皆さん、どう思われますか?