世にも不思議な損保の世界

現役損保社員として20数年、業界に対して思うこと、保険やお金に関する話を面白おかしくつづります。

黒いものも白に

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入社後最初に配属された私の課には、とある熱い先輩社員がいました。

私もお世話になり、尊敬できる先輩でした。

 

ところがある日、その先輩が査定部門の課長と激論を交わしていました。

激論と言えば聞こえは良いですが、実際は激しい口論でした。

 

ある自動車事故の保険金支払いについて先輩は「払ってくれ」、相手課長は「いや、払えない」という内容です。

相手課長は「約款上払えない」と。

先輩は「とにかく大事なお客さんだから払ってくれ」という内容。

これだけだと先輩がダメなものをゴリ押ししているように聞こえます。

でもディーラー営業の世界、そんな単純な話ではありません。

 

これは先輩が担当する販売店が扱うトラックの自動車保険の話でした。

そのトラックが壁にぶつかり、車両保険の請求がありました。

ところが、そのトラックの壊れた部分は違法改造した部分だったのです。

 

写真で見ましたが、映画のトラック野郎に出てくるような凄いデコトラでした。

その課長曰く「あれはガンダムだよ」と。

そのトラックは法令違反の改造をしていて、壊れたのはその部分の請求だから払えないですよ、という相手課長の主張です。

 

約款上払えないからそれで終了となればよいのですがそうはいきません。

先輩としてはこれが支払い対象外になるとそのトラックの契約がなくなるだけでなく、代理店である大型販売店からもクレームになる、というわけです。

大型販売店からのクレームはすなわちそこでの扱いが減るということです。

自動車保険自賠責保険の切り替えなんて簡単ですからね。

 

押し問答の結果、営業の立場である先輩が「本当は払えないけど、営業上やむを得ないから払ってくれ」という稟議書を書いて支払うことになりました。

その課長はそっとその申請書を事故フォルダ(案件を紙でファイリングしているもの)に挟み込みました。

 

「損害保険会社ってこんな仕事をするんだ。やっぱり大口顧客を守るのは大変だな」と思いました。

でもこれって個人の契約者や普通の代理店からしたら納得できないですよね。

昔問題になった証券会社の損失補てんと同じ構造で、大口顧客優遇ですから。

 

でも当時こんなのは日常茶飯事でした。

 

皆さん、どう思われますか?