世にも不思議な損保の世界

現役損保社員として20数年、業界に対して思うこと、保険やお金に関する話を面白おかしくつづります。

虎の威を借る狐の話

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今回も保険会社に対して立場が強い代理店の話です。

それはドクターの保険を扱う代理店。

当時一番ベテランの担当者が担当していました。

 

仕事の内容はその代理店のご機嫌伺いと情報収集です。

昼前にいそいそと出掛けてそこの人達と昼食を共にします。

そこに参加しないと情報はもらえないし、評価も下げられます。

 

評価が下がるとどうなるか。

その代理店が抱える大口契約の分担割合を下げられるのです。

 

分担契約について少し。

 

本来1つの契約においては1つの保険会社が契約を引き受けます。

ところが危険が大きいなどの理由で複数社が分担して引き受けることがあります。

シェア分担して保険料も支払保険金もその割合で按分します。

建設業界におけるJV(ジョイントベンチャー)みたいなものです。

 

これを使って契約者は意のままに分担割合を変更することができます。

1契約で1億円の保険料の契約があるとします。

30%の分担割合を10%下げられただけで2千万円減収です。

 

この数値を代理店の一存で変えることができるのです。

損保担当者もその契約を下げられたら自分の人事評価に影響します。

這いつくばってでも日参するわけです。

 

またそこのトップもかなりドラスティックな人だったようです。

少し機嫌を損ねるとシェア変更や取引停止などと騒ぎ出していたようです。

保険会社として前向きな仕事なんてできるはずがありません。

とにかく火の粉をかぶらないように頑張るしかありません。

あわよくばその火の粉が他社にいけばラッキーです。

 

これによって我々若手担当者もしわ寄せを受けます。

ベテラン担当者がそこに掛かり切りになり、担当が増えます。

「ただ昼飯食いに行っているだけなのに何なんだ」と思います。

 

さらにシェアが落ちると若手担当が必死に増やした数字が一気に下がります。

当然課の中は変な空気になります。

本来一番働いて稼ぐべき人が数字を落としてくるわけですから。

 

逆に数字が増えることもあります。

それは他社が失敗した時です。

そんな時は大々的に「よく頑張ったな」みたいに雰囲気になります。

若手担当者はシラけます。

 

でもそんなことをして自らの影響力を誇る人たちってどうなんでしょう。

そもそもその契約が大きいのはドクターがお金持ちだからです。

保険契約にたくさんお金を払うドクターの契約を扱っている代理店だからです。

 

別にその代理店のトップが偉いわけでも何でもありません。

ドクターをバックに偉そうに振舞っているだけです。

ドクターも自分の契約でそんなことが起きているなんて知らないでしょう。

 

皆さん、どう思われますか?