世にも不思議な損保の世界

現役損保社員として20数年、業界に対して思うこと、保険やお金に関する話を面白おかしくつづります。

マンション保険の割引

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当時マンション管理会社を担当していました。

これも名前を聞けば誰もが知っている会社でした。

主な保険種目は分譲マンションの共用部を対象とする火災保険でした。

 

その管理会社では自分の会社を含めて2社の取り扱いがありました。

マンションを建てる度にどちらかの会社で保険を掛けていました。

メインはもう1社の方でしたが、自社商品が選ばれることもありました。

 

マンションの管理組合は基本的に管理会社にお任せです。

管理会社が勧める保険にそのまま入る傾向があります。

つまりその管理会社が保険会社の決定権を持っていました。

 

やはり過去からの取引は変えられません。

保険料もだいたい同じような感じで優位性もありません。

いろいろ工夫しましたが、割り込む余地はありませんでした。

 

ところが千載一遇のチャンスはやってきました。

何と保険料を割り引いてもいいという指示が出たのです。

個人分野の保険は基本的に割引をしてはいけません。

 

というと法人分野は割引をして良いのかという話ですが、

これは全然オッケーです。

この話はまた別の機会に書きたいと思います。

 

何とこの管理会社の取り扱いであれば10%引いていいよと。

大口ユーザー割引みたいなものです。

これで一気に保険料競争力が上がりました。

以降当社の保険が採用されることが多くなりました。

 

マンション共用部分の保険は保険料規模が大きいので大増収です。

いやいやラッキー。

今までの努力は何だったんだ。

 

でもこれって何か変だと思いませんか。

別のところでは10%引かずに売っているわけです。

同じ商品がある代理店では定価で、ある代理店では10%引きです。

 

同じ保険会社が扱っている火災保険で保険料が違うのです。

一般人はそんなこと思いもしませんよね。

個人的にも何か不公平を感じるところです。

 

定価販売で売っている個人代理店可哀そうです。

定価で買わされている一般顧客も釈然としないでしょう。

皆さん、どう思われますか?

 

 

 

 

 

 

 

大変な保険

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この塾では教室向けの傷害保険もやっていました。

経営者、雇われ先生を対象とする団体保険です。

これも年間何千万円かの保険料の保険となっていました。

 

団体保険であったために毎年の募集は大変でした。

当時も保険の募集帳票というのはかなり厳格化されていて、

原則は保険会社汎用のものを使うことになっていました。

 

でも当然その団体オリジナルの内容になっているので、

個別にパンフレットを作成しないといけません。

募集する団体側との内容の打ち合わせ、社内の稟議、

印刷業者との打ち合わせ、印刷会社からの納期、塾側への納品などなど。

 

塾側では各塾に定期的に送付する書類の発送のタイミングがあって、

それに間に合わないと大変なことになります。

それぞれの工程に滞りが出ることは許されません。

 

中でも一番大変なのは社内の稟議です。

塾の方から言われたことを盛り込んだ内容を入れるとダメ出しです。

NGワードがあって「激安」といった刺激的な言葉、

「一番」といった裏付けのない言葉は使用禁止です。

 

またチェックする社内の人はそれだけしかしていない暇な人が多く、

何だかんだイチャモンをつけてきて面倒くさい。

だったらお前がやれよと言いたくなることが多々ありました。

 

一つひとつクリアして外に出す文書が出来上がるのですが、

その後その内容で印刷会社に発注する際に指示をします。

これも骨が折れるのですが結構印刷会社が内容にミスが多い。

やり直しをしているうちに納期が迫ると胃が痛い思いをします。

 

印刷会社とは毎回金額と納期の交渉をします。

社内でも予算管理がうるさいので交渉しますが、印刷会社も引きません。

値段が高いと後から上司に文句言われます。

一方、交渉して納期が遅れることは許されません。

結構面倒な仕事です。

 

でもここまでやって無事納品されても印刷ミスが発生します。

その時はショックです。

再度訂正文書を添付するなどで対応しますが、当然関係者から小言を言われます。

 

一般の方には保険のパンフレットがどれだけ大変な思いで作られたものか

手に取るときに少しでも感じてもらえたらな、と思います。

 

皆さん、どう思われますか?

適当な保険

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全国にフランチャイズ展開する塾の保険の話です。

その保険は通塾する児童がケガをした時に保険金を払うものでした。

よくそんな保険作ったなって感じです。

 

これも保険料計算の根拠があいまいでした。

以前からずっとそのままの内容になっていました。

聞いたこともない特約もついていました。

 

私もどうすることもできませんでした。

お手上げってやつです。

 

会社としても新規契約の対応をしていませんでした。

これまで契約していた塾に対して更新のみ受け付けていました。

私も下手に内容を変えて面倒に巻き込まれたくありませんでした。

 

これって官僚とか役所の人の考え方ですよね。

前例踏襲していれば責任は問われない。

組織が大きくなるとえてしてこうなるんでしょうね。

 

結局前の内容を一切変えることなくそのまま更新対応しました。

募集パンフレットも全く同じ、日付だけ変えました。

果たしてその後どうなったのか私にも良く分かりません。

 

ひょっとしたらそのまま入り続けている塾もあるかも。

まあ何かあったら保険金支払いは大丈夫だと思いますが。

事故もなさそうですが保険料も安かったのでまあいいかとも思います。

 

皆さん、どう思われますか?

危険な保険

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当時保険業界にコンプライアンスという概念が登場しました。

正しくないことは全て見直す、というのが基本です。

業界側からするといきなり規制が厳しくなりました。

というかそれだけいい加減な保険が多かったかということです。

 

そんな時代、先の高校野球の保険は危ないお金の集め方をしていました。 

団体の保険というのはいったん団体が加入者からお金を集めます。

その保険も本来であれば団体の代表がお金を集めるべきでした。

 

ところが何らかの理由でそれができなかったのでしょう。

あるいは団体側から断られたのに保険をスタートしたかったのでしょうか。

あろうことか当時の担当者の個人口座を使って集金をしていたのです。

 

私の担当する直前に始末書が提出されていました。

当時の担当者の上司が書いた始末書(経緯書)でした。

担当者がやめたのをいいことに、担当者が勝手にやったことになっていました。

 

一担当者がそんなことをするはずがありません。

1つの契約を取ることでクビを賭けるなんてしません。

どうやら退職後に責任を押し付けられたようです。

その担当者もそうした会社に耐えられずやめていったのでしょう。

 

保険料も適当、そして危険な集金方法。

何千万もの保険料が一旦保険会社社員の個人口座に入る保険。

着服を疑われても言い訳なんてできません。

 

下手するとその責任が押し付けられる。えらいところに来てしまった。

その時は背筋が凍る思いでした。

幸い自分が来た時には解消されていたので良かったのですが。

 

きっと他にもこんなことがたくさんあるのだろう。

 

私の予感は当たっていました。 

その後続々と危ない契約が出てきました。

私の担当外にも存在していました。 

 

皆さん、どう思われますか?

 

不公平な保険

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次に取り掛かったのは野球の保険です。

全国の高校野球部を対象にしており、保険料規模も数千万円単位でした。

 

さて今年の満期はいつで、内容はどんなものかな?

練習中にボールが飛んで近くの車にぶつかって窓ガラスを割ったら下りると。

ボールが人にあたってケガをさせたら下りると。

 

大丈夫なのかなこんな保険引き受けて、というのが率直な感想でした。

そもそもグラウンド周囲にネットを張るとか、それなりにやることがあるのでは。

予想はだいたい当たっていました。

 

事故の内容を調べると特定の学校が同じように保険金請求をしていました。

ボールがネットを超えて駐車中の車のボンネットにあたってへこんだ。

同じように学校の窓ガラスを割った。

 

安全防止対策をするより数万の保険料払った方がいいんでしょう。

その野球部としては毎年支払う保険料(掛け金)よりもらう保険金の方が多い。

何ておいしい保険なのでしょうか。

 

でも全体としては採算が取れているのでよしとしていました。

圧倒的に保険料(掛け金)を払うだけの野球部が多いから成り立っているのです。

 

グラウンドが狭くて安全策が十分取れない野球部は掛け金を高くして、

しっかりしている野球部は掛け金を低くするなどにしないと不公平ですよね。

何となく割り切れない思いをしつつもその年の準備をした記憶があります。

 

でもこの保険の本当の問題はここではなかったのです。

皆さん、どう思われますか?

恐ろしい空港の保険

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赴任早々、とある空港の何千万もの保険の満期が到来。

種目は火災保険、賠償責任保険、海上保険、運送保険・・・、

何じゃこりゃー(怒)

 

そもそも個人の火災保険の保険料の出し方すら分からないのに。

いきなり空港の、しかも本部照会、本部稟議になる特殊な保険。

でも満期は迫っており、早く動き出さないと。

 

ここから毎日睡眠時間を削って対応していくことになりました。

まずは保険の基本の勉強。自宅に持ち帰ってひたすら勉強。

土日なんてあるはずがありません。

 

計算式は担当者に代々引き継がれているエクセルの表。

本当に計算式合ってるのか?間違ったらえらいことだよな。

遠方に行ってしまった前任者にもいろいろ聞きながら作業を進めました。

 

取りあえず見積ができたら課長の承認の上、本部に稟議。

特約はどうするんですか?、割引はどうするんですか?

途中契約者にいろいろ言われ、毎回必死でメモを取って宿題に。

冷や汗をかきながらも無事完了しました。

 

始まりから終わりまで1ヵ月以上経ってようやく完了しました。

全て終わったときはまさに頭の中は真っ白、しばらく脱力感が続きました。

ところが別に周囲は何事もなかったかのように流れていきました。

そう、ここは企業営業。そんなことは当たり前。

 

これからはじまる地獄の序章でしかありませんでした。

ほっとしたのもつかの間、新たな試練が来ることになりました。

皆さん、どう思われますか?

保険のことが分からない

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約6年のディーラー営業を経て新しい職場に赴任しました。

新しい職場は主に公的機関や企業を相手にする営業でした。

 

心の中ではやっと心とお金がすり減るディーラー営業から解放された、

これからは常識が通用する相手に普通の仕事ができるぞ、と思っていました。

 

赴任して前任者から引き継ぎを受けました。

うんうん、そうそう、仕事ってのはこういうふうにアカデミックであるべきだよね、

と少しウキウキしながら話を聞いていました。

 

ところが少しずつ心がザワついてきました。

引継ぎの中でここの企業火災保険は・・・、あそこの団体傷害保険は・・・、

火災保険?傷害保険?団体保険?

 

そうです。

私はずっとディーラー営業をやっていたのです。

自動車保険自賠責保険以外分かりません。

 

たまに火災保険が出てきても当時は規制に守られて同じ保険料でしたので、

「火災保険は前と同じ保険料ですよ」と答えていました。

ゴルファー保険が出てきてもパンフレットに保険料が記載されていました。

 

これはマズい、困ったぞ。

その日から新人に逆戻りすることになりました。

それからしばらく引継ぎの日々で前任者と代理店訪問をしました。

 

言っていることが分からない。

相手は当然保険会社の人間は全部分かっていると思っています。

これは本当にマズいと思いました。

 

私はまた新人からの出直しでした。

毎日知らない保険を勉強することになりました。

しかも今度の場所の先輩社員は結構ドライでした。

私は途方に暮れることになりました。

 

皆さん、どう思われますか?