世にも不思議な損保の世界

現役損保社員として20数年、業界に対して思うこと、保険やお金に関する話を面白おかしくつづります。

召使い系ディーラーの話

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先輩から聞いたディーラーの話です。

 

そのディーラーではよく土日にイベント実施します。

先輩の担当ディーラーでは取引損保がイベントへの動員数を競うそうです。

「〇〇社、30人動員」「△△社、40人です」とディーラーに報告します。

 

当然そこに参加する社員はそのディーラーで購入した車で駆けつけます。

新車で同じ車種がズラッと並ぶ様子はかなり壮観らしいです。

イベントは損保社員のサポートの元、粛々と実施されていきます。

 

別の話です。

 

各損保の部長は毎朝の日課としてそのディーラーの社長室に行くそうです。

そして社長の机を拭いているそうです。

それを忘れたがために出入り禁止になった部長がいたという噂。

 

また天皇と言われるそこの社長の旅行には各損保の部長が同行するそうです。

しかも24時間行動を共にするとのこと。

まるで召使いのように対応するのです。

 

ある損保の部長はどうしても家族にお土産を買いたいと思ったそうです。

「どうかお腹をこわして病院に行ったことにしてもらえないか」

と他損保の部長に懇願してお土産を買いにいったそうです。

 

とことんディーラー様様です。 

凄いディーラーの話はまた紹介していきたいと思います。

 

皆さん、どう思われますか?

時限爆弾のような契約

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ある年度末のこと。

恒例のように開催される積立保険の目標達成に向けた打ち合わせでのこと。

 

進行役の先輩社員が「例の大口積立保険の失効は年度内にはまだ入らないよな」と。

聞かれた女子社員は答えました。「年度内は大丈夫です」と。

 

いったい何のことだ?

会議の後でその先輩社員に聞いてみました。

 

「ああ、さっきの話ね。ウチの課から転勤で出て行った奴が、飲み屋の女性から取った積立保険の支払いが止まっている。このままだといずれ契約が失効になって、大きなマイナスが入る。年度末に入ったら大変なことなんでね」

 

そうです、年度末に大きなマイナスが入ると目標達成に大きな影響が出るのです。

でもその飲み屋の女性もやめてしまったらしく、音信不通のようです。

 

でもこの話、何年にも渡って続いていた話でした。

年度末近くになると何故か一定額の支払いがされたため失効にはなりませんでした。

どうにも本人が支払っている様子はありません。

払えるなら毎月払いますし、保険会社の年度末なんて関係ないですし。

 

契約を取ったその担当者が払っている「のだろう」という話でした。

自分が残した契約で迷惑を掛けるわけにはいきませんから。

毎年年度末に自腹を切って失効を逃れていたのでしょう。

 

まさに時限爆弾のような契約でした。

その後その契約がどうなったかは分かりません。

 

皆さん、どう思われますか?

 

 

目標は絶対達成すべし

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入社して最初の年度末のこと。

いきなり「積立保険の打ち合わせをするぞ」と先輩から言われました。

 

ディーラー営業は普段自動車保険自賠責保険の販売の仕事をしています。

ところが会社の年間目標達成のためには積立保険もやらないといけません。

 

そのために年度末は年間目標達成のために積立保険獲得の活動をします。

でも普段の仕事をしている限り、積立保険なんて出やしません。

その年も例年のごとく、いつの間にか担当者ごとの目標数値が割り当てられました。

 

計算方法はシンプル、足りない分を人数で頭割りです。

多少担当している販売店や入社年次も考慮されますが、大差はありません。

 

建前としては担当自動車販売店で実績を挙げることになっています。

ところが普段自動車の販売をしている人が積立保険を売るはずはありません。

 

結局次のような順番で進めていくことになります。

1.自動車販売店の営業マンに「売って」もらう。

2.自動車販売店の営業マンに「入って」もらう。

3.自動車販売店の内勤部門の人に「入って」もらう。

4.社内の同期、内勤部門の人達、友人、知人、親族に「入って」もらう。

5.やむなく自分で「入る」。

 

損保営業社員は自動車販売店に対して立場が弱いです。

したがって1.~3.はすぐに全滅します。借りも作りたくないですし。

 

そうこうしているうちに年度末はどんどん近づいてきます。

毎日の打ち合わせでも先輩社員から詰められて逃げ場がなくなってきます。

 

仕方なく友人や親に泣きついて4.を頑張りますが、それでも足りません。

結局5.にたどりつきます。こうして給料は積立保険に形を変えることになります。

これが最初の年の年度末のことでした。

 

当然これは毎年の恒例行事になります。

これがトラウマとなって未だに積立保険や生命保険に苦手意識があります。

保険業界では各社どこも似たり寄ったりだと思います。

 

皆さん、どう思われますか?

 

 

何でも買います

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ディーラー営業時代、私だけでなく周りの先輩もいろんなものを売っていました。

 

一番多かったのはカードです。

各ディーラーは顧客の囲い込みのためにメーカークレジットカードを売っていました。

彼らなりのノルマがあったようです。

 

当然損保社員もそれに協力します。

当然私もひっきりなしにカードを申し込んでいました。

お金は掛からないので負担の少ない本業協力でした。

 

ただ手元には山のようにカードが残ります。

トランプができそうなくらいの数を持っていました。

加入するときに「すぐ解約していいから」と言われますが、解約は忘れます。

結局無駄な会費を払ってしまっていました。

 

浄水器を売っている先輩もいました。

つらそうだったので私も1つ買いました。

寮に住んでいたので使うことができず、実家にそのまま送りました。

 

先輩は寮の洗面所にその浄水器をつけました。

みんな使っていいよ、とのことでしたので私も浄水器の水で歯を磨きました。

あまり効果があったようには思えませんが。

 

寝袋、ハチミツなんてのもありました。

車を輸出していたメーカーが輸出国の外貨獲得に協力しているとのことでした。

もちろん両方買いました。

 

アウトドアの趣味がなかったので寝袋は他のディーラーの所長にあげました。

買ったときは5万円くらいしたような気がします。

ハチミツは朝のトーストに塗って食べました。

残念ながらあまりトーストとの相性は良くなかったです。

 

こんなふうにいろんなものをディーラーで買いました。

そのお金を貯金してたらどのくらい貯まったのだろうかと思います。

 

皆さん、どう思いますか?

何でも売ります、オーホッホッホッホッ

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ディーラー営業時代はいろんなものを売りました。

 

と言っても自分が売ることで儲けるわけじゃありません。

ディーラーが売るものを代わりに社内で自分が売るのです。

 

自動車販売店って本当にいろんなものを売っています。

彼らもお客様の本業に協力することもあるようでそれはすべて損保に回ってきます。

 

代表的なところで私はスーツ販売、宝石販売、グルメ販売をやりました。

 

スーツ販売は半期ごと、ボーナス時期ごとに実施されました。

相手もボーナスを狙っています。

会議室を借りて社員を呼び込み、スーツを作ってもらいます。

損保ごとに販売件数を競わされていました。

 

決して安くないスーツだったので新人の自分には負担が大きかったです。

でも結構な人数の方がスーツを作ってくれました。

でも7~8万するスーツ代の支払いで何十万というお金を立替えました。

今だと2~3万円でスーツ買えると思いますけどね。

ディーラーは集金までやってくれませんので個人的にはきつかったです。

 

宝石販売も会社の会議室借りて展示販売会を実施しました。

ディーラーはバックマージンもらっていたか、彼らの本業客先だったのでしょう。

どこだか分からないメーカーの宝石なんて誰が買うんだろう、と思っていました。

でも独身の女性社員とか結構買ってくれて有難かったです。

 

グルメ販売は年会費5万円くらい払うと、毎月全国のグルメ品が送られてきました。

カニや、イクラ、肉、それだけ聞くと別に悪くないですよね。

ところが私は独身寮に住んで調理器具もなかったので食材が来ても料理ができません。

結局そのまま周囲の女性社員にあげてしまいました。

 

ディーラーから頻繁に車も買っていました。

その他本業協力もしていたので当時の生活はいつも赤字ギリギリでした。

独身だったから何とかやっていけたんだと思います。

 

皆さん、どう思われますか?

保険セールスお断り

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ちょっと今回の話は長めです。

 

当時、私の担当ディーラーは積立保険に積極的ではありませんでした。

おかげで年度末以外はあまり「自爆」(自分で保険に入ること)せずに済みました。

ところがその日は突然やってきました。

 

その頃、損保でも生保を売るようになりました。

規制緩和というやつです。金融ビッグバンとも言われましたっけ。

とにかく我々ディーラー営業にも生保の目標が乗っかってきました。

でも積立保険も売れないディーラーで生保なんて売れるはずはありません。

 

でもディーラーには売るための必殺技があります。

そう、「キャンペーン」と呼ばれるただのノルマ強化期間の設定です。

 

話はそれますけど、損保業界ではこのキャンペーンという言葉を良く使います。

代理店や営業マンを件数や保険料でランキングして表彰するイベントです。

たくさん契約を取った営業マンや拠点が表彰されることになります。

 

さて、私の担当ディーラーでも生保キャンペーンがスタートしました。 

ディーラーの社員1人1件で目標が割り当てられました。

契約なんて出るわけありません。

誰が車の販売店で生命保険に加入するでしょうか。

 

キャンペーン期間はまたたく間に終盤に差し掛かりました。

私は焦りました。ヤバい、ディーラーに怒られる、課長にも怒られる。

ところが今回のキャンペーン、さらにマズい事態が発生していました。

 

ディーラー営業マンは最初から自爆を覚悟していました。

上が決めたキャンペーンだから反抗ができませんが目標はやらねばなりません。

ところが今回のキャンペーン、営業マンが自爆したくても自爆できません。

そう、生命保険は社員が自分の会社で加入することができないのです。

 

生保には「構成員ルール」と呼ばれる特殊なルールがあります。

会社の「構成員」である社員は自分の会社が代理店となる生命保険に入れないのです。

会社で入れば楽だし、会社の収益にもつながるのに変な話です。

 

このルールには裏があります。

生保レディにとって職域という最大のマーケットを守るためと言われています。

そのために生保業界がゴリ押ししたと言われています。

生保業界は政界に影響力を持っているそうですから。

 

これだけならまだ「頑張って外販しましょう」と言えました。 

ところが同時期にキャンペーンをしていた他損保は外資系生保を扱っていました。

なんと外資系生保は第三分野(医療・がん)に限って構成員ルールが外れるのです!

じゃあ「構成員ルールって何なの?」と突っ込みを受けそうです。

 

これはアメリカの圧力と言われています。

某アヒルの外資系生保会社ががん保険を売りまくっています。

日本社に規制があるなかで、外資系はこのルールに守られていました。

生保業界は政治的な圧力で訳の分からないことが多いです。

 

今はそのルールはもう撤廃されました。

でも当時は日本社だけに「構成員ルール」が適用されていたのです。

私の所属する損保は日本社ですからこの構成員ルールの対象でした。

 

多くのディーラー営業マンはそこの損保(生保?)で自爆しようとしました。

キャンペーンの件数目標を達成しないと上から怒られますから。

 

これはマズい!

自分が担当する拠点の営業マンがこぞって他損保(他生保)の保険に入るなんて。

上司やディーラーに半殺しにされないよう私は頭の中でいろいろ考えました。

 

そして決めました。

他損保で入られるくらいなら自分が保険をかき集めて営業マンの成績にしてしまえ!

そこから私は自分のみならず、親兄弟、知人友人の契約をかき集めました。

そして自分が担当する拠点の営業マンの成績にしました。

 

私は何とかキャンペーンの目標をやり切り、他損保の攻勢も乗り切りました。

一方で親兄弟、知人友人からはしっかり「保険屋」のレッテルを貼られました。

身内に保険を売る「保険屋」のイメージそのものです。

二度とこんな経験はしたくないと思いました。

 

キャンペーンという言葉、思い出したくもありません。

 

皆さん、どう思われますか。

自爆と呼ばれる保険契約

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目標達成のためにやむなく自分で保険に入ることを「自爆」と呼びます。

年度末の目標達成のためにやることが多いです。

しかしディーラー営業の場合、年度末だけではありません。

 

ある先輩は営業所単位で毎月積立保険の目標を持っていました。

ディーラー営業マンも積立保険まで目標持たされて大変な仕事です。

 

当然目標達成できない月が出てきます。

そんな時、その先輩の登場です。

颯爽と営業所に現れた彼は救世主のように自ら積立保険を契約、目標達成に導きます。

 

そこまでして目標達成を目指すのには理由があります。

目標達成できないと損保社員はディーラー本社から拠点指導能力不足を問われます。

最悪「テリ変」と呼ばれる恐ろしい事態が待っています。

 

テリ変とは「テリ」トリー「変」更のことです。

担当拠点を他の損保に切り替えられることです。

ディーラー営業では最も恥ずかしいこととされています。

そうならないように先輩は頑張っていたのです。

 

でもこれは担当している間、ずっと続きます。

生活にも影響が出てきますので保険に入るにも限度があります。

やむなく前に加入した保険を解約して新しい保険に加入するようになります。

まさに保険の自転車操業です。

 

保険は中途解約すると、掛け金に対して戻ってくる金額が大幅に減ります。

その先輩もかなり損してると言っていました。

結局転勤するまでそれが続きました。

 

当然後任の担当者も同じことをすることになります。 

大変なところに配属されたなと思いました。

私も似たような状況に追い込まれました。

 

損保社員の給料は保険に消える。

 

皆さん、どう思われますか?